
「真空ポンプの導入を検討しているが、種類が多くて選び方がわからない」
「現在、現場ではロータリーポンプを使っているが、ドライポンプへの切り替えを検討している」
製造現場や研究施設の担当者様から、このようなご相談をよくいただきます。
真空ポンプは用途や環境によって最適な種類が異なるため、選定に頭を悩ませるケースは少なくありません。
本記事では、真空機器の総合商社としての視点から、ロータリーポンプの仕組み・種類・メリット・デメリットをはじめ、他ポンプとの比較まで分かりやすく解説します。
目次
ロータリーポンプ(油回転真空ポンプ)とは

ロータリーポンプとは、オイルを使って内部の気密性を保ちながら排気する真空ポンプの一種です。
メーカーによっては「油回転真空ポンプ」「ロータリーベーンポンプ」とも呼ばれますが、いずれも同じ装置を指します。
真空ポンプのなかで最も歴史が長く一般的な方式であり、種類も多く価格も比較的安価です。
幅広い分野で長年使われてきた実績があります。
大気圧から(約100,000Pa)中真空(〜10⁻¹ Pa程度)の排気に対応でき、より高い真空度が必要な装置の補助ポンプ(バックポンプ)としても活用されています。
ロータリーポンプの原理

ロータリーポンプの動作は、大きく3つのステップに分かれます。
① 吸気
シリンダ内で偏心したローターが回転すると、ベーン(羽根)がシリンダ内壁に沿って動き、内部の空間が広がります。この空間の拡大によって吸気口から気体が引き込まれます。
② 圧縮
ローターの回転が進むにつれて空間が縮小し、気体が圧縮されます。このとき、オイルがローターとシリンダの隙間を埋めることで密閉性を確保し、高い排気効率を実現します。
③ 排気
圧縮された気体の圧力が大気圧を超えると、排気バルブが開いて外部に排出されます。
オイルは潤滑と密閉(シール)の両方の役割を担っており、これがロータリーポンプの性能を支える核心です。一方で、このオイルが定期的なメンテナンスを必要とする要因にもなります。
ロータリーポンプの種類
シングルステージ(1段式)
ポンプ室を1つだけ備えた構造です。
排気速度が大きく、大量の気体を効率よく処理できます。
到達真空度は数Pa~10Pa台で、低〜中真空の用途に広く使われます。
ツーステージ(2段式)
ポンプ室を直列に2つ繋げた構造です。
気体を2段階で圧縮するため、シングルステージよりも低い圧力まで引くことができます。
到達真空度は10⁻¹~10⁻²Pa台で、シングルステージより高真空な領域まで引きたい場合に用いられます。
1段式と2段式比較表
| シングルステージ(1段式) | ツーステージ(2段式) | |
|---|---|---|
| 到達真空度 | 数Pa~10Pa台 | 10⁻¹~10⁻²Pa台 |
| 排気速度 | 大きいタイプがある | 小型・中型タイプ |
| コスト | 低い | やや高い |
| 向いている用途 | 低〜中真空 | 中真空 |
ロータリーポンプのメリット・デメリット

メリット
・導入コストが低い(ドライポンプと比較した場合)
ロータリーポンプは、ドライポンプと比較した場合に導入しやすい部類に入ります
・幅広い圧力範囲に対応
大気圧から中真空まで1台でカバーできます
・ガス種による制限が少ない
不活性ガス・腐食性ガス対応モデルなど、用途に応じたポンプ本体の仕様とオイル仕様との組み合わせで幅広いガスに対応できます
・補助ポンプとして使用できる
ターボ分子ポンプや油拡散ポンプのバックポンプとして、高真空システム全体の引き始めを担うことができます
デメリット
定期的なオイル交換が必要
オイルは消耗品であるため、定期的な交換と管理が必要です
オイルミストの逆流リスクがある
真空側にオイルが逆流することがあります。
クリーンルームや食品・医薬品を扱う現場では、オイルミストフィルターやトラップとの併用が必要です
到達真空度に上限がある
1段式は実用域では数Pa~10Pa台まで、2段式は実用域では10⁻²Pa台まで対応可能です。これを超える高真空(10⁻3Pa台以下)が求められる用途では、ターボ分子ポンプなど上位ポンプの補助機(バックポンプ)として連結運用します。
合わせて読みたい
真空ポンプのオイル漏れが起きたら?主な原因と応急処置・対策を徹底解説油水分離機でオイル代削減!基礎から選び方まで徹底解説
ロータリーポンプと他ポンプの比較

ロータリーポンプとドライ真空ポンプ
おおまかな基準として「初期コスト重視・汎用用途ならロータリー」「クリーン環境・管理の手間とランニングコスト削減ならドライ」を選ばれる方が多いです。
| ロータリーポンプ | ドライ真空ポンプ | |
|---|---|---|
| オイル使用 | あり | なし(オイルフリー) |
| 導入コスト | 低い | 高い |
| メンテナンス | オイル・オイルミストトラップフィルタ の交換が必要 |
頻度が少ない |
| クリーン度 | オイルミストリスクあり | クリーンな真空が得られる |
| 向いている環境 | 汎用・コスト優先 | 半導体・医療・食品など |
オイルミストが許容されない現場(半導体・医療・食品)ではドライポンプ一択です。
近年では「オイル管理の手間の削減とクリーン化」を目的とした導入が加速しており、設備の更新時期に合わせてロータリーポンプからドライ真空ポンプへ移行するケースが増えてきています。
ドライ真空ポンプについては、こちらの記事でも解説しております
ドライ真空ポンプとは?種類や特徴、導入メリットを専門家が解説!
ロータリーポンプ vs スクロールポンプ
スクロールポンプは、ロータリーポンプと用途やサイズ感が最も重なりやすい代表的なドライポンプの一種です。
オイルフリーで静音性・省スペース性に優れる反面、排気量が比較的小さいため、実験室や分析装置などの小規模な用途に適しています。
一方、大排気量が必要な量産ラインや過酷な産業用途では、ロータリーポンプ(またはスクリュー式・ルーツ式の大型ドライポンプ)の方が適しています。
補助ポンプ(バックポンプ)としての使い方

ロータリーポンプ単体での限界(10⁻² Pa台)を超えて10⁻³ Pa台以下の高真空を作るには、ターボ分子ポンプや油拡散ポンプの補助ポンプ(バックポンプ)としてロータリーポンプを組み合わせます。
高真空ポンプが稼働できる圧力までロータリーポンプがあらかじめ引き下げ、その背圧を維持するという役割を担います。
\ 排気速度の計算・機種選定などお任せください /
真空のお困りごとは三弘エマテックへ
ロータリーポンプの製品例
「自社にはロータリーとドライのどちらが合うか分からない」「機種の選定で迷っている」という場合も、ぜひ三弘エマテックにご相談ください。
「まずは情報収集だけ」「概算コストを聞きたい」といったお問い合わせも大歓迎です。
特定のメーカーにとらわれず、お客様の用途やご予算に合わせた最適な機器をご提案。
導入後のメンテナンスやランニングコストを抑えるポイントも含め、真空機器のお悩みを総合的にサポートいたします。
エドワーズ社製 RVシリーズ(小型ロータリーベーンポンプ)

モードセレクタスイッチにより、1台のポンプで高真空モードと高排気モードの切り替えが可能な多用途モデルで、フリーズドライ・抽出・ろ過・ゲル乾燥などの湿式用途に最適です。逆流防止排気バルブにより安全性が高く、自己センタリング機構でメンテナンスも容易です。
エドワーズ社製 EMシリーズ(オイルシール型ロータリーベーンポンプ)

低騒音・コンパクト設計で実験室・科学用途での実績が豊富なモデルです。シングルおよびツーステージのラインナップがあり、ターボ分子ポンプとの組み合わせにも最適です。直感的な操作性と省スペース設計で、柔軟な設置に対応します。
まとめ
ロータリーポンプは、長年にわたり幅広い産業で導入されている最も基本的かつ汎用性の高い真空ポンプです。
導入コストの安さや扱える用途の広さが大きな魅力ですが、定期的なオイル管理やオイルミストへの配慮が必要です。
近年では、クリーンな環境が求められる現場やメンテナンスの手間を減らしたいケースにおいて、ドライ真空ポンプへの切り替えを検討されるお客様も増えています。
三弘エマテックでは、ロータリーポンプだけでなく幅広い真空ポンプを取り扱っています。
「ロータリーポンプを購入したい」「今の設備をそのまま更新すべきか、この機会にドライへ切り替えるべきか」といったご相談も、用途・環境・コストをヒアリングしたうえで中立的にご提案しますので、お気軽にお問い合わせください。
\ 「まずは話だけ」でも大丈夫 /
ご相談はこちらから