蒸気やミストが配管にたまりポンプが傷む、油の逆流が心配――そんな課題に応えるのが真空トラップです。
この記事では、真空システムを守る真空トラップの役割と原理から、用途に合わせた選定のヒントまで、現場で役立つ知識を解説します。
目次
真空トラップは何のため?
真空トラップは、真空ポンプと装置本体(チャンバー)の間に設置し、システム全体を保護するフィルターのような存在です。
- ポンプをトラブルから守る
腐食性ガスや蒸気を捕まえ、ポンプの故障やオイル劣化を防ぎます。 - 品質維持
プロセスで生まれる余分な不純物を除去し、製品への汚染を防いで品質を安定させます。 - 安全な環境の維持
人体や環境に有害な物質が大気へ漏れるのを防ぎ、安全な作業環境を保ちます。 - オイルの逆流防止
オイルの蒸気が製品側へ逆流してしまう「バックストリーミング」を止めます。
原理の基本
真空トラップが不要なガスや蒸気を捕まえる基本的な仕組みは「冷やして固める」か「くっつけて捕らえる」かのどちらか、またはその両方の組み合わせです。
凝縮・凍結
トラップ内を低温に冷やし、通過する蒸気を液体や霜にして壁面に付着させます。
水蒸気を効率よく除去するのに効果的です。
吸着
活性炭などの多孔質な材料を使い、臭いや特定のガス成分をスポンジのように吸着する方法です。冷却だけでは取り除きにくい物質を捕獲します。
トラップを付けるとガスの流れが少し悪くなるため、排気時間に影響が出ないか注意が必要です。
真空トラップの種類と特徴の比較
用途や真空ポンプの種類に合わせて適切なトラップを選びましょう。
真空ポンプの種類に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。
真空ポンプの種類を徹底解説!主ポンプから高真空ポンプまで仕組みと用途を紹介
コールドトラップ(ドライアイス+溶媒)
- 温度: 約–78℃
- 特徴: 手軽で導入しやすいですが、ドライアイスの補充が必要です。実験室での短時間使用に向いています。
クライオトラップ(液体窒素)
- 温度: –196℃
- 特徴: 非常に高い捕集能力を持ち、特に水分の除去に絶大な効果を発揮します。ただし、液体窒素の取り扱いには安全教育が必須です。
機械式冷却トラップ
- 温度: –40℃〜–150℃程度
- 特徴: 冷凍機を内蔵し、スイッチ一つで連続運転が可能です。工場などでの長時間稼働に適しています。
用途別・選定チェックリスト
- 捕集したいものは何か?(水、有機溶剤、ガスなど)
- どのくらいの冷却温度が必要か?
- 連続運転は必要か?
- 予算と運用コストは?
設置位置と配管のコツ
- 基本位置
真空トラップの最大の役割は、真空ポンプを守ること。
そのため、汚染源とポンプの間に、必ずポンプに近い側へ設置してください。 - 圧力計
トラップの前後にあると、霜詰まりなどの不具合を発見しやすくなります。 - ドレン抜き
捕集した液体を排出するバルブがあると、メンテナンスが楽になります。
よくある質問(Q&A)
Q1. ドライアイスと液体窒素はどちらがいい?
A. 手軽さならドライアイス、徹底的に水分を除去したいなら液体窒素がおすすめです。
Q2. 詰まりのサインは?
A. 真空計の数値がなかなか下がらなくなったら、詰まりを疑いましょう。
Q3. どんなポンプにも必要?
A. 特にオイルを使うポンプや、清潔な環境が求められる場合に効果を発揮します。
まとめ
真空トラップは、ポンプや製品を守り、真空システム全体の安定稼働を支える縁の下の力持ちです。
用途に合ったものを選んで正しく運用することが、トラブルの予防と品質向上につながります。
三弘エマテックでは、真空機器の総合商社として、「こんなことで困っているんだけど…」といった初期段階のご相談から、機器の選定、メンテナンスまで、あらゆるご相談を承っております。
真空に関する疑問や導入のご相談がありましたら、どうぞお気軽にお問合せください。