生産ラインの停止にもつながる真空ポンプのオイル漏れは、もっとも避けたいトラブルのひとつではないでしょうか。にじむ程度の軽度なものから、床に垂れるような重度の漏れまであり、現場では運転を継続できる状態かどうかの判断が欠かせません。
この記事では、オイル漏れが起きた際にまず確認すべきポイントを中心に、主な原因・応急処置・タイプ別の特徴・予防策をわかりやすくまとめました。

目次
真空ポンプでオイル漏れが起きる原因
真空ポンプのオイル漏れは、さまざまな部位の劣化や異常が組み合わさって発生します。主な原因を理解しておくと、現場での初期判断がスムーズになります。
ガスケットやOリングの劣化・破損
ガスケットやOリングは熱や振動、経年によって硬化し、ひび割れが起きると密閉が保てずオイルがにじみ出します。消耗部品のため定期的な交換が必要です。
オイルの入れすぎ
交換時にオイルを規定量以上入れてしまうと、運転中にオイルが噴き出すことがあります。交換直後に漏れた場合は、まずオイルレベルを確認しましょう。
オイルミストフィルタの詰まり・劣化
フィルタが詰まると排気系統の背圧が異常に高まり、ポンプ内部のオイルが逆流して外に漏れ出すことがあります。特に粉塵の多い現場では劣化が早いため、オイル漏れする前に交換すると安心です。
オイルの劣化
高温運転が続く設備ではオイルが酸化しやすく、粘度低下やスラッジ(黒い固形汚れ)が発生します。粘度が落ちるとシール保護能力が低下し、オイル漏れの原因にもなります。
シャフトシールの摩耗・劣化
回転軸部分を密閉しているシールが摩耗すると、オイル漏れに繋がりやすくなります。特に連続運転設備や、頻繁にON/OFFを繰り返す設備では負荷が大きく、摩耗が進みやすい傾向にあります。
タンク・配管のクラック(ひび割れ)
落下や強い衝撃、振動などでケースや配管が割れてしまうと、ガスケット交換をするだけでは改善しません。目視でひびが確認できる場合は運転停止を推奨します。
応急処置の前に!確認したいチェックポイント5つ
オイル漏れを発見したときにすぐに応急処置に入るのではなく、前準備としてまず軽度・重度の判断することが大切です。この確認を行うことで、応急処置を行ったのちに運転を続けてもよい状況か、停止すべき状況かを正しく判断できます。
応急処置の前に、次の5点をチェックしてみてください。
オイル漏れの量
軽度の場合は、ガスケットや継手からのにじみであることが多く、ふき取り後もしばらくは落ち着くことがあります。
一方で、滴下するほどの漏れや床に溜まっていく場合は、内部シールの破損やケースのひび割れといった重度トラブルの可能性があります。
オイルレベルが急激に下がっていないか
オイルの量が急激に減っていれば、外部に流出しているサインだと考えられるでしょう。一度運転停止を検討することをおすすめします。
オイルレベルがあまり変わっていなければ、軽度で済む可能性もあります。レベル変化は故障の深刻度を知る重要な判断源ですので、しっかり確かめましょう。
漏れている位置の特定
漏れの原因となっている位置を確認・特定することは、応急処置で済むか判断するためにとても重要です。
ガスケットや継手まわりのにじみ
軽度の漏れで、応急処置ができます。消耗部品の劣化が原因のため、交換すれば改善されることが多いです。
シャフトシール(軸の付け根)付近の漏れ
重度の漏れの可能性があります。シールが摩耗しているため、分解や交換が必要です。運転を続けると更に悪化するので、即停止を推奨します。
ケース側面や配管のひび割れ
ひび割れは応急処置では対応できません。修理が必要のため、すぐに運転を停止して対応を検討しましょう。
異音・振動・温度の異常がないか
漏れに加えて、以下のような症状がある場合は、内部摩耗や焼き付き前の状態が疑われます。この場合は応急処置での継続運転は危険で、早期停止が望まれます。
- 金属音
- 異常な振動
- 表面が異常に熱い
稼働ログを確認する
ログ情報は「原因がいつからか」を把握するヒントになります。温度上昇や異常停止のログがあれば、内部で負荷が蓄積していることがあります。
現場でできる最低限の応急処置
オイル漏れは早急に点検すべきトラブルですが、すぐに設備を止められない場合もあります。設備を止めないための最低限の対応として応急処置の方法を紹介します。
①オイル量・フィルタなどの基本点検
規定値より高すぎる場合は余分を抜き取り、少なすぎる場合は補充します。
また、オイルミストフィルタの詰まりは背圧上昇と逆流を引き起こすことがあるため、汚れが目立つ場合や重く感じる場合は交換を検討しましょう。
②外装の清掃と原因の特定
外装をきれいに拭き取り、どこから漏れているかを確認します。
フランジやガスケット周りの緩みが原因の場合は、軽い増し締めで改善することがあります。ただし過剰に締めると破損するため注意が必要です。
③オイル受け皿・吸油材を使って一時的に運転を継続する
緊急時の一時的対策として有効です。ただし、応急処置のみで長時間運転することは推奨されません。
オイル漏れを放置するとどうなる?生産ラインへの影響
オイル漏れは軽度であっても放置すると、やがて重大なトラブルや故障につながる可能性があります。特に真空ポンプは設備全体の基盤となる装置のため、わずかな異常でも早期点検と対策が欠かせません。
真空ポンプのオイルの役割は潤滑と密閉です。漏れが進むと摩擦熱が増え、焼き付きによる大規模故障へ発展します。
また、ポンプの真空性能の低下にも直結し、設備全体の真空度が不安定になることによって作業工程に影響がおよび、生産効率の低下や品質不良の原因となります。
中でも食品・医薬・電子部品など清浄度が重視される現場では、漏れたオイルが飛散することで製品への付着リスクが発生し、品質事故につながる恐れがあります。
オイル漏れの特徴│ポンプタイプ別
ロータリーポンプ
ロータリーポンプは、その名の通り回転機構を利用して真空を作り出すポンプであることから、オイルによる潤滑と密閉が不可欠です。特に、回転軸を密閉するシャフトシールまわりは摩耗しやすく、オイル漏れの原因として比較的よく見られます。
また、排気側に取り付けられているオイルミストフィルタが詰まると、内部圧力が上昇し、オイルが逆流して漏れることもあります。粉塵が多い環境ではフィルタが詰まりやすく、定期点検が欠かせません。
さらに、オイルの状態は性能に直結するため、交換サイクルを守ることで密閉性の維持や部品摩耗の抑制につながります。
スクリュー式ドライポンプ
スクリュー式ドライポンプは、基本的にオイルレス構造ですが、タイプによってはギアボックス側に潤滑油を使用するモデルがあります。ドライポンプは運転中に高温になりやすく、ギアボックスのシール部の劣化リスクが高まります。
ドライポンプは構造が比較的複雑で、内部異常が外から見えにくいため、異音や温度変化に気づいた段階で早めに専門家へ相談することが大切です。場合によっては分解整備が必要になるケースがあるため、無理に運転を続けると故障範囲が広がる可能性があります。
ブースターポンプ(ルーツポンプ)との組み合わせ時
ブースターポンプとロータリーポンプを組み合わせて運転する場合、一方の異常がもう一方へ影響することがあります。
例えば、ブースター側の動作不良や逆回転などの異常が発生すると、ロータリー側の圧力が上昇し、内部のオイルが逆流するバックストリームの原因になることがあります。
そのため、どちらの設備も点検・保守を同じタイミングで行うことが重要です。特に、配管の詰まりやバルブ動作不良はどちらにも影響するため、片方ずつではなく全体的な点検を行いましょう。
ポンプの種類が多くて分からない、真空ポンプの仕組みを知りたい、という方はこちらの記事をご覧ください。
真空ポンプの仕組みをわかりやすく解説!用途や構造・選び方まで紹介
真空ポンプのオイル漏れ予防策まとめ
オイル漏れは突然のように見えて、実際には日頃の小さな負荷の積み重ねで起きるケースが多いため、普段から予防に繋がる対策を意識しておくことが大切です。
オイルとフィルタを定期交換する
オイルが劣化すると粘度が落ち、シールの摩耗が早くなります。
また、粉塵の多い環境ではオイルミストフィルタが詰まりやすいため、早めの交換サイクルを意識しましょう。
設置環境を見直す
わずかな傾きや高温環境、近くの振動源などは、シールやガスケットの負担を増やします。
レベル調整や温度管理だけでもトラブル率は大きく変わります。
小さなにじみの段階で点検する
「にじみ程度だから大丈夫」と放置すると、シャフトシールの摩耗やケースの劣化につながります。
早めの点検・相談がトラブル防止につながります
真空ポンプのオイル漏れは、ガスケット劣化・フィルタ詰まり・シール摩耗など、さまざまな要因が重なって発生します。
応急処置で一時的に運転を続けることはできることもありますが、根本的な改善には専門的な点検が欠かせません。
真空ポンプはメーカー・機種によって構造が異なるため、適切な部品選定や故障診断には専門知識が必要です。
真空機器を総合的に取り扱う三弘エマテックでは、さまざまな真空機器を取り扱っている強みを活かし、お客様のご要望に合った部品手配・点検・メンテナンスまで総合的にサポートしています。
「原因が判断できない」「交換部品の選び方がわからない」などのお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。


