真空ポンプを選ぼうとしたら、「種類が多すぎて何が違うのかわからない」と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんなお悩みを解決するために、真空ポンプの種類を「構造」や「得意なこと」で分類し、それぞれの特徴や選ぶ際のポイントをわかりやすく解説します。あなたにピッタリの真空ポンプを見つけましょう!
目次
真空ポンプは「真空度」と「仕組み」で分類できる
まず押さえておきたいのが、次の2つの分類軸です。
真空度による分類
- 粗引きポンプ(主ポンプ):
大気圧から低〜中真空まで排気。高真空ポンプの補助役も担います。 - 高真空ポンプ:
粗引きポンプの後に使用され、高真空〜超高真空を実現。単体では使えません。
作動原理による分類
- 容積移送式(気体を押し出すタイプ):
気体を圧縮して排出(例:油回転・ドライ・水封式) - 運動量輸送式(分子を移動させるタイプ):
羽根で気体分子を弾く(例:ターボ分子ポンプ) - 気体溜め込み式(分子を移動させるタイプ):
極低温や化学反応で気体を吸着(例:クライオポンプ・イオンポンプ)
真空ポンプの仕組みについては以下の記事で解説しておりますので、合わせてご覧ください。
真空ポンプの仕組みをわかりやすく解説!用途や構造・選び方まで紹介
粗引きポンプ(低〜中真空)の種類
油回転ポンプ
構造がシンプルでコストも抑えられる、最も一般的な種類です。オイルミストの逆流には注意が必要です。
【主な使用用途】
食品の真空パック機/エアコンや冷蔵庫の冷媒充填/理化学実験装置(ろ過や乾燥)/真空成形機等
ドライポンプ
油を使わず、「クリーンで高精度」が求められる現場で用いられるポンプです。
半導体や医薬品製造などに最適ですが、高価で構造は複雑です。
【主な使用用途】
半導体・液晶ディスプレイ製造(クリーンルーム対応)/医薬品・化学薬品製造/分析装置/真空搬送等
水封式ポンプ
内部の水を使って気体を吸引。湿気・粉・腐食性ガスに強く、化学・製紙・発電分野で活躍します。
【主な使用用途】
ガス吸引/真空脱水/発電所での復水器排気/真空冷却/水分・粉塵を含む空気の排気等
高真空ポンプ(高〜超高真空)の種類
ターボ分子ポンプ
高速回転する羽根で気体分子を弾き出します。短時間でクリーンな高真空が得られます。
【主な使用用途】
電子顕微鏡・質量分析計/表面分析装置(XPS、AES)/真空蒸着装置・薄膜形成装置等
クライオポンプ
極低温の面で気体を凍結吸着。幅広い分子種に対応し、宇宙関連や薄膜装置で重宝されます。
【主な使用用途】
半導体製造(特に大口径基板装置)/宇宙開発分野/加速器・放射線装置/極低温物理実験の真空保持等
イオンポンプ
磁場と電界で気体をイオン化し、内部に固定。振動がなく、長時間安定して超高真空を維持できます。
【主な使用用途】
粒子加速器・放射光施設/表面分析(超高真空条件)/X線光電子分光(XPS)装置/長時間連続運転が求められるシステム等
選定時に確認したい4つのポイント
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必要な真空度:高真空が必要か、粗引きで十分か
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クリーン度:オイルフリーが求められるか
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排気対象の性質:腐食性・可燃性ガス、水蒸気などへの対応
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コストと運用性:導入費だけでなくメンテナンス性も考慮
まとめ
真空ポンプは、それぞれ異なる特性と用途を持つ装置です。目的に応じて、種類を正しく見極めることが最適な導入への近道です。
三弘エマテックでは、装置単体の選定だけでなく、バルブ・配管を含む真空システム全体の設計・施工までトータルに対応。ご相談はお気軽にどうぞ。